【思い出小説】(1/3)16歳の本気の恋
!!!!警告!!!!
今回は私、待宵スークのリアル青春物語です。
甘酸っぱく、痛々しく、読んでいる方が恥ずかしくなるような描写が多数含まれております。
途中、寒気・吐き気などを感じる恐れがあります。
如何なる問題が発生しても当方では責任を負いかねますので、ご了承ください。
しかも、長すぎてもはや小説です。
覚悟を決めてからお読みくださいませ。
***************************
高校に入学してから約半年。
私は女子高生のキラキラしたイメージとはほど遠い、地味で冴えない毎日を過ごしていた。
今どきらしいオシャレなんかよく分からず、もちろん化粧もしていない。
制服を可愛く着こなすことも、センスの良いアクセサリーをさり気なく身に付けることもできず…そんなことで悩んでる暇があったら、壊滅的な数学と英語の成績を何とかしなければ。
4月は友だちづくりに失敗してしまい、毎朝不安でお腹が痛くなっていたけど、今ではどうにか一緒にお弁当を食べたり、教室移動のとき一緒に行ったりしてくれる友だちはできた。
部活は、このブログでは初めて言うけどバスケ部だった。
高校では入るか入らないか迷ったが、同期にも先輩・後輩にも恵まれ、やはり入って良かったと思っている。
そのバスケ部で、私は忘れられない人と出逢った。
大袈裟な(笑)。
自分で書いていて恥ずかしい。
高校1年の、確か10月の半ば頃だったと記憶している。
正直きっかけはあまり覚えていないのだけど、私は男子バスケ部にかっこいい先輩がいることに気付いた。
遠目だからかっこよく見えるのかな?
本人にばれないように気を付けつつ、よーく見てみる。
よーく…
いや、間違いなくかっこいい。
それが1年上、つまり当時2年生の「青井先輩」だった。
青井先輩は、色白で少し小柄(身長172㎝)。
美形だった。
それも、派手な主張の強い顔ではなくて薄いけど整っている美形。
色白で美形って、少女漫画のヒーローかよ。
そんなにかっこいいのに、なぜ半年も気付かなかったのか?
小さい頃から母親に「あんたは面食いだね」と言われていた私が。
バスケ部の男女は、いつもコートを半分ずつ使って、同じ空間で練習していたのに。
それは、彼が地味だったからである。
青井先輩が普段クラスでどんなキャラなのかは分からないけど、少なくともバスケ部の中では目立たない存在だった。
男子バスケ部の中でも、ふざけて笑いを取ったり、女子バスケ部によく絡んできたりする人は印象に残ってすぐ覚えられる。
でも、青井先輩はそういうことはまずしない。
そしてもう1つ。
ぶっちゃけ、青井先輩はそこまでバスケが上手い方ではなかった。
レギュラーではなかったので、試合に出る機会も少ない。
だから私も含め女子たちの注目を集められる場面が少なかったのだ。
要するに青井先輩は、バスケ部の中では地味で活躍の機会があまりない、隠れイケメンだったのである。
ずいぶんひどい言い様だなと思われるかもしれないが、隠れていようが何だろうがイケメンはイケメン。
見つけてしまった私は毎日彼を目で追うようになった。
中学時代、今どき女子たちはみんな好きな先輩がいた。
昼休みにその先輩がグラウンドでサッカーをしているのをベランダから眺めては、キャーキャー騒いでいた。
私にはそれが全く理解できず、「『(同級生ではなく)先輩が好き』っていうのをステータスか何かだと思っているんだろう」と、彼女たちを白い目で見ていた。
卒業式の日、「明日から先輩がいなくなっちゃう」と号泣している女子を見てドン引きしたのを覚えている。
しかし、今や私も中学時代に馬鹿にしていた女子たちと同じような状態になってしまった。
部活のときは、もちろん可能な限り青井先輩を見ていた(練習は真面目にやっていたけど)。
青井先輩がシュートを決めると嬉しかったし、青井先輩がミスをするとなぜか私まで居たたまれない気持ちになった。
それだけでは足りなくて、青井先輩のクラスの時間割をこっそりチェックして、移動教室で1年生の階の連絡通路を通るのを隠れて見ていた。
もはやちょっとしたストーカーである。
バスケの大会のときに提出する選手登録一覧表を部室から探し出して、誕生日も確認した。
先ほど身長172㎝と書いたが、それもこの表を見て得た情報である。
毎日毎日、青井先輩を見ていた。
校内を歩いているときも、いつも青井先輩を探していた。
青井先輩のことを地味だと書いたけど、冒頭で述べた通り、私も彼に勝るとも劣らない地味女子。
その上、青井先輩が美形なのに対して、私は別に顔も特別可愛いわけではない。
オシャレでもないし。
明るくもないし。
バスケも上手くないし。
足も太いし。
男子バスケ部の、しかも1つ上の先輩に話しかけることなんてとてもできなかった。
校内でばったり会ったとき挨拶するのが精一杯だ。
いつも青井先輩を目で追っていると、当然のことながらいろんなシーンを目撃した。
男バスの友だちが落としたタオルを拾ってあげたり。
バスケ部の女子マネージャーが重い荷物を運んでいるのを持ってあげたり。
友だちとふざけて大笑いしていたり。
一人でシュート練習をしていたり。
私は、話したこともなく、ただ遠くから見ていただけなのに、いつの間にか本気で青井先輩を好きになってしまった。
はじめは単にかっこいいなと思って眺めていたのが、だんだん胸がきゅっとするような切なさを覚えるようになった。
しかし、青井先輩と付き合いたいとか、そういう気持ちにはならなかった。
私はまだ男子とまともに付き合ったことなんてなかったし、それまでは身近で関わりの多い男子しか好きになったことがなかった。
だから、話したこともない先輩と付き合うなんて想像できなくても無理はない。
仮に付き合いたいと思ったとしても、私にはアピールできるところなんて何一つなかった。
ただ、青井先輩に今日いいことがありますように。悲しいことが起こりませんように。
心の中でそんなことを密かに願うだけで、幸せな気分になれるのだった。
青井先輩を好きでいられることが嬉しい。ずっと好きでいたい。
今思えば、私も「同級生ではなく先輩に恋している」ということに少なからず酔っていたのかもしれない。
でも、今までの恋とは違うと思った。
当時16歳の私にとっては本気の恋だった。
ああもう。本当恥ずかしいな(笑)
でも、いよいよここからだ。
季節はめぐり、2月。
相変わらず、青井先輩に話しかけることもなく、ただ青井先輩を探して遠くから見つめるだけの日々が続いていた。
しかし、青井先輩との距離は変わらなくても、想いは募る一方だった。
私は青井先輩にバレンタインチョコを渡すと決意する。
でも交際を申し込むのではない。
ただ、青井先輩に好きだと伝えたい。
そう思ったのだ。
同じ女バスで仲が良かった友だち2人には私の気持ちをすでに打ち明けていたので、バレンタインのことも応援してくれた。
どうやって渡そうか、という計画も一緒に立ててくれた。
青井先輩に気持ちを伝えたいけど、付き合ってくれと言うわけでもないし、誰にも知られたくない。
誰にも見られることなくチョコを渡したい。
そこで、バレンタインの日の部活の練習が終わって、先輩が帰っていくときに渡すことにした。
文で説明すると分かりにくくて申し訳ないのだが…
学校の正門を右に出ると、JRの駅。
正門を左に出ると、私鉄の駅。
(自転車通学者もいる)
私はJR(右)、青井先輩は私鉄(左)だった。
私鉄利用者はかなり少なかったので、学校の門を出たら、その先は青井先輩は一人である可能性が高い。
そこを狙って渡そうと決めた。
本命チョコを渡すなんて、恥ずかしいので親にももちろん内緒である。
しかし、バレンタインにはクラスの友だちや女バスみんなでチョコを交換することになっていたので、怪しまれることなく自宅で手作りすることができた。
問題はラッピングだ。
女子用はみんなで交換なので1人分は少ないし、ラッピングも凝ったものは使わない。
でも、青井先輩へのチョコはそういうわけにいかないので、青井先輩用にきれいな箱を買っておいた。
あとは、家族に見られずにどうやってその箱にチョコを入れるか。
手作りのお菓子なので、何日も前から用意してタイミングを見計らうわけにもいかない。
作るとしたら前日か、早くても前々日。
家族に隠れてラッピングするチャンスは極めて少ない。
2月13日。
私は母と姉と一緒にトリュフを作った。
母のパート仲間の方に教えてもらったレシピで、簡単なのにとても美味しい。
そして、その夜。
家族が寝静まるのを待って、私は女子用にラッピングしてあるトリュフを子ども部屋に持ってきた。
子ども部屋は姉と一緒なので、物音を立てて起こしてしまわないように細心の注意が必要だ。
女子用のラッピングをいくつかほどき、形が良いものを選んで青井先輩用の箱に詰め替える。
トリュフにまぶしたココアパウダーが飛び散らないように、そーっと。
普段何気なく食べているチョコレートだが、日頃食べ物を持ち込むことのない子ども部屋では、香りが非常に気になる。
真冬なので寒いけれど、部屋にチョコの香りが残らないように窓を少し開けた。
トリュフを傷付けないよう慎重に、でもできるだけ手早く。
誰も起きてきませんように…
どのくらい時間がかかったのかは分からない。
それでも何とか無事に青井先輩用のラッピングを完成させることができた。
いよいよ明日。
そう思うと胸が高鳴った。
続く