家族や友達には話しにくいけど、でも誰かに聞いてほしいこと

家族や友達には話しにくいけど、でも誰かに話したいこと

日々いろんなことを考え、悩むけれど、家族や友達には話しにくい。でも誰かに話したい。そんな話をつらつら綴ります。アラサー、子無し主婦、海外在住、駐在妻。

朝が来た ー明けない夜はないー (創作)

いやーーーー今日はなんて良い天気なんだ!

窓の外を眺めながら、俺は思わず深呼吸をした。

 

太陽が眩しい。

 

空が青い。

 

小鳥のさえずりが聞こえてくる。

 

 

 

昨日までと同じ朝なのに、昨日までとは全く違うような気がする。

 

今までのどの朝よりも素晴らしく感じられる。

 

 

 

 

長い、とてつもなく長い夜が明けた。

 

 

たくさんの悲しみと苦しみを乗り越えて、

みんなが待ち望んでいた朝が来たのだ。

 

 

 

 

 

 

「綾美!いつまで寝てるの!」

友紀恵が階段の下から2階の子供部屋に向かって叫んでいる。

 

 

「いいよお母さん、私が起こしてくる。はあ...再開初日から登校班に遅れるの嫌なのに、綾美ってば...」

 

姉の真優がブツブツ言いながら階段を上がっていく。

 

 

 

キッチンから漂うトーストの香り。

ジュージューと卵を焼く音。

 

 

テレビからは聞き慣れた女性アナウンサーの声が流れてくる。

 

「今日の第1位は、水瓶座のあなた!みんなの注目が集められる日!お気に入りの服でお出掛けしてみましょう!ラッキーアイテムはミルクティーです♪」

 

 

「みんなの注目」に「お出掛け」か...

 

 

普段はどうでもいいと思って聞き流している星座占いだが、今日は何だか感慨深い。


外出自粛が続いて、学校も2020年3月からずーーっと休みだった。


真優も綾美も、クラスの「みんな」に会える、外に「出掛けられる」日をどれだけ楽しみにしていたことか。

 

 

 

 

そう、今日からようやく小学校が再開。

 

授業も行事もずいぶん潰れてしまったし、どうやって対応していくのだろうという不安はある。

 

だけど、とにかく学校が始まるということが今は喜ばしい。

これから少しずつ日常を取り戻していくのだ。

 

 

 

ドタドタと階段を下りる音がして、2人がリビングに入ってきた。

 

「いい?あんたが登校班の待ち合わせに遅れると私まで気まずいんだからね?」

 

「もーーお姉ちゃん朝からうるさい」

 

 

 

 

 

2020年1月下旬、少しずつ日本でも報道されるようになった新型コロナウイルスによる肺炎。

 

怖いなとは感じたが、まさかこんな未曾有の危機が訪れるなんて思ってもみなかった。

 

 

 

初めに流行が起こった中国湖北省武漢市から、政府のチャーター機で日本人が帰国。

 

日本国内でも屋形船やツアーバスなどでの感染が確認された。

 

横浜港に停泊した豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号では、700人を越える集団感染となる。

 

 

 

この頃は中国での感染者や死者の数が報道の中心だった。

しばらくすると、韓国でも感染者が増え始める。

 

しかし、何となく、何だかんだで、日本は大丈夫だろうという気がしていた。

 

 

 

後に流行の中心はヨーロッパやアメリカに移る。

 

凄まじい勢いで増えていく感染者と死者。

世界的に有名な観光都市から人影が消えた。

 

 

命の選別を迫られる医療の現場。

死者の埋葬も追い付かない。

そして医者自身も感染して倒れていく。

 

現地に住む日本人がテレビの取材やSNSで必死に訴える。

「日本もこのままでは危ない」

 

 

 

 

2月の終わり頃から大きなイベントの中止や延期が求められるようになり、予定通り開催するか否かで主催者を悩ませた。

 

開催して叩かれた歌手や団体もあった。

 

 

 

都市部を中心に日本でも感染者がどんどん増えていたが、まだ危機感は薄かったと思う。

 

3月2日からの全国一斉休校が決まったときは正直驚いてしまった。

あまりにも突然の発表だったし、そんなにやばいの?って。

 

 

 

俺は3月に入ってからも職場の送別会があったし、友紀恵も美容院に行ったりしていた。

家族4人でショッピングモールに出掛け、外食もした日もあった。

 

 

 

本格的に感染防止対策をしないとまずいなと思い始めたのは、3月の半ば頃からかな。

 

 

オリンピックの延期が決まって、真優も綾美もがっかり。

 

「ワクワクできる時間が1年長くなったんだって考えよう!」なんて、すぐポジティブ変換できるのは綾美の良いところだ。

 

 

 

3月末、志村けんが亡くなったのはショックだったな...

 

感染が報じられてからわずか1週間。

あっという間だった。

 

別にファンというわけではなかったが、取り返しのつかないことになってしまった、という恐怖と悲しみに襲われた。

 

友紀恵も追悼番組を見て涙ぐんでいた。

 

どんなに手を尽くしても、助からないときは助からないんだ。

 

俺だけではなく、多くの日本人が思ったことだろう。

 

 

 

 

 

日本各地で大小のクラスターが発生。

 

東京都では1日に確認される感染者が100人を越えるようになる。

 

今思えば、こんなのはまだ序の口だったが。

 

 

 

「不要不急の外出を自粛しましょう」

 

「3密を避けましょう」

 

「こまめに手を洗いましょう」

 

 

医療崩壊、感染爆発、都市封鎖の可能性。

 

情報番組では毎日繰り返し警戒が呼び掛けられていた。

 

 

 

「感染するときはするから怖がっても仕方ないかなーって」と言って飲み歩く若者。

 

「これがストレス解消だから来ないわけにはいかないんだよね」と言ってパチンコ屋に並ぶ中年オヤジ。

 

「この街の雰囲気が好きなのよ。だからコロナに負けないぞっていう強い気持ちで!」と言って巣鴨に買い物に来るばあさん。

 

 

コロナ関連のニュースを見ていると、気が滅入るばかりか、身勝手な人々に腹が立ってくることもよくあった。

 

 

 

 

 

4月7日、7都府県に緊急事態宣言が出される。

 

でもこの緊急事態宣言、そろそろ出されるんじゃないかって言われるようになってから実際に出されるまでが長くて...

 

首都圏から地方に帰省したり、疎開したりする人が続出。

 

それならまだしも、感染者が出ていない地域に旅行に行ったりとか。ふざけてんのか。

 

 

 

 

そして本当の戦いはこれからだった。

 地獄の始まりだった。

 

 

日本は大丈夫だろうと思っていた。

自分は大丈夫だろうと思っていた。

 

 

政治家たちは瀬戸際瀬戸際と繰り返していたが、やはり日本はすでに瀬戸際から落っこちていたのだ。

 

 

 

 

緊急事態宣言が出されても止まらない感染拡大。

 

家族に看取られることさえ叶わず、亡くなっていく人々。

 

新型コロナ以外の病気の人々にも深刻な影響が出た。

 

救えるはずだった命がいくつも失われた。

 

 

 

 

外出自粛が長引き、ますます消費は冷え込んでいく。

倒産も相次いだ。

 

 

自粛自粛自粛。

 

いったいいつまで続くのか。

この程度の補償ではとてもやっていけない。

 

 

 

医療も経済も崩壊し、このまま人々の繋がりや心まで崩壊してしまうのかーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、長く暗い夜はついに明けた。

 

止まっていた街がようやく動き出すことを許された。

 

 

 

社会に残された爪痕は深い。

払った犠牲もあまりにも大きい。

 

あの時、こうしていたら...

もっと早く対策を講じていれば...

 

タラレバを言いたくもなる。

 

それでも今は前を向くしかない。

 

 

 

悲しみに染まった日本もきっと立ち上がる。

 

今までもたくさんの困難を乗り越えてきたんだ。

 

時間はかかるかもしれないが、日本人は負けない。

 

 

 

 

 真優、これでディズニーランドにも行けるようになるぞ。

 

綾美、バスケクラブの練習もやっと始まるな。

 

友紀恵、EXILEの次のライブ、チケット当たるように祈っておくわ。

 

俺も家族で沖縄旅行、行きたかったなぁ。

 

 

 

「お母さーん!私の連絡帳知らない?」

 

「知らないわよ。ちゃんと準備しておきなさいって昨日言ったでしょう?あんたの机の上じゃないの?」

 

「綾美、まだー!?あと10秒で来なかったら置いてくよー!!」

 

 

 

あーあ、まったく...(笑)

 

来週から友紀恵も働き始める予定だし、毎朝こんな感じで慌ただしいんだろうなぁ。

 

だけど、先の見えない苦しみがようやく終わって、こんな何気ない日常がものすごく幸せだったんだということを改めて実感する。

 

 

 

友紀恵には苦労をかけることになってしまって申し訳ないが、俺だけで済んで良かった。

 

大事な大事なお前たちにうつっていなくて本当に良かった。

 

 

 

「お父さん、行ってきます」

「行ってきまーす」

 

 

真優と綾美が俺の写真に向かって手を振ってくれる。

 

 

行ってらっしゃい。気を付けてな。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

こんにちは。

待宵スークです。

 

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、皆さんも不安な気持ちで暮らしていることと思います。

 

日常生活が狂わされ、ストレスも溜まりますよね。

 

「コロナが終わったら◯◯したい!」

「コロナが終わったら△△に行く!」

 

そんなふうに未来の楽しみを想像しながら過ごしている方も多いのではないでしょうか。

 

 

 

今回のお話は、一応...創作ということになるのかしら(汗)

 

Twitterで「#コロナが終わったら」というハッシュタグがあることを知り、

 

みんな、自分は生きてコロナの終わりを迎えられるつもりなんだなぁ

 

と思ったことがきっかけで、この話を書きました。

 

 

もちろん、「コロナが終わったら」というのは楽観的な気持ちから言っているのではなく、危機を乗り越えようという強い意志が込められていることは分かっています。

 

ですが、すでに亡くなった方もたくさんいて、この家族のような悲劇が(もっとひどいものも)これからもどんどん増えていくのです。

 

 

私自身、ここまで来てもまだ自分や家族は何だかんだ大丈夫なんじゃないかと思ってしまっています。

 

そんな己に対する戒めというか、ある意味心の準備というか...縁起でもねぇなと思いつつ書いてみました。

 

 

 

創作と呼んでいいのか分からないくらい、あまり練らずに思い付きで書いてしまったので、全体的に雑で申し訳ありません。

深夜に一気書きするパターン。

 

 

あ、それから本文に出てくるコロナ関連の出来事は細かく調べ直していないので、時系列の誤り等はお許しください。すみません。

 

 

 

皆さんと皆さんの大切な人たちが無事にコロナの終わりを迎えられますよう、夜明けを迎えられますよう、心よりお祈り申し上げます。

 

 

お読みくださってありがとうございました。