人生で一番はまった本の話
今回は、こぼりたつやさん(http://twitter.com/tatsuya_kobori)主催の3000文字チャレンジ企画に初参戦です!
テーマ「おすすめ」ということで、一切のひねりもネタも無しに、普通に私のおすすめをご紹介します(笑)
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大変恥ずかしい話なのですが、私は日頃ほとんど読書をしません。
小説もビジネス書も自己啓発本も。
漫画やブログは読むんですが。
小さい頃からそんなに読書好きな子ではありませんでした。
嫌いというわけではないですけど。
しかし、小学生時代から漫画雑誌ばかり読むようになり、母親には「本を好きになってほしくて毎晩読み聞かせをしていたのに」とがっかりされてしまいました。
高校生までは学校の国語の授業で文章を読む機会がありますし、夏休みの読書感想文を書くためにも本を読まなければいけません。
でも、そういったこと以外で自分から積極的に本を読むということはあまりなかったと思います。
国語の成績は良かったですけどね。
大学受験のときも私を救ったのは国語。
「読書する子は読解力がある」って本当?
読書しなくても、読解力ある子はある。
(でも、文才はやはり読書してきた人に到底敵わないと思う今日この頃…)
そんな私が、たった一度だけ本にドはまりしたことがありました。
大学1年生の頃だったでしょうか。
後にも先にも、ここまで没頭して読んだ本はありません。
その本が面白くて面白くて、出来るだけ長く読んでいられるように毎朝わざわざ快速ではなく各駅停車に乗ってゆっくり大学に行っていました。
大学の授業中も、早く続きが読みたくて仕方がない。
帰りの電車でももちろん読みます。
一日中、目が覚めた瞬間からずっとその本のことを考えていたといっても過言ではありません。
その証拠に、当時朝のアラームとして使っていたアヴリル・ラヴィーンのアルバム曲を聴くと、その本を読みながら思い描いていた情景が今でも頭に浮かんでくるのです。
読書習慣のない私がそこまで心を奪われた本とは。
それがこちら。
「ローマ人の物語」(新潮社、塩野七生 著)
古代ローマについての本です。
わりとメジャーですかね?
ハードカバー(全15巻)と文庫版(全43巻)がありますが、私が読んでいたのは文庫版です(文庫版の写真は最後に掲載)。
大学時代、親の迎えを待つときに時間をつぶしていた駅前の本屋に、この本のシリーズがずらりと並べられていました。
高校時代の世界史の先生がとても博識で授業も面白く、そのおかげで世界史が好きでした。
といっても、世界史の成績が特別良かったわけではありませんでしたが。
覚えることがとにかくたくさんある。
王様の名前とか紛らわしいし。
ジェームズ1世、チャールズ1世、チャールズ2世、ジェームズ2世?
何その順番。勘弁してくれよ。
第○共和制とか、○月革命とかね。
領土拡大縮小しすぎだしさ。民族も移動しすぎ。
フェニキア人とシュメール人とか、全然響き違うんだけど何かかぶるんだよね。
ヨコのつながり?
無理無理。
タテすら枝分かれと統合を繰り返して真っ直ぐつながらないのに。
と、まぁこんな感じで、得意だったかといわれると決してそうではありませんでした。
しかし、世界史のロマンといいましょうか、スケールの大きさといいましょうか。
胸が震えるんですよね。
戦争や革命の繰り返しですから、世界史の教科書1冊の中でどれだけの命が失われているのか分かりませんけども。
さて、話が逸れましたが、とりあえず私は世界史が好きでした。
高校時代は古代ローマに大して興味はなかったのですが、本屋で見ているうちに「ローマ人の物語」シリーズを読んでみたくなり、1巻から買ってみることにしたのです。
文庫版の1~2巻は「ローマは一日にしてならず」。
紀元前753年のローマ建国からイタリア半島統一まで。
ちなみに、この頃日本はまだ縄文時代かな?ヨコのつながり(ドヤァ)
いやーこれは面白い。どんどん買おう。
最初はこのくらいのテンションでした。
ところが。
この後ですよ。
3~5巻の「ハンニバル戦記」。
これで私は完全にやられてしまいました。
ハンニバルというのは人物名ですが、ローマ人ではありません。
第二次ポエニ戦争(紀元前219年~紀元前201年)でローマと戦ったカルタゴ(アフリカの地中海沿岸にあった国)の将軍です。
第二次ポエニ戦争は別名「ハンニバル戦争」と呼ばれており、彼がローマにとってどれほどの強敵であったかを表していますね。
ポエニ戦争は第一次から三次まであり、1世紀以上に渡ります(紀元前264年~紀元前146年)。
ハンニバル戦争と呼ばれるのは第二次だけですが、このポエニ戦争編全体のタイトルが「ハンニバル戦記」になっているんですよね。
ポエニ戦争によってローマに訪れた危機の大きさは、ハンニバル抜きには語れないわけです。
最終的にはもちろんローマが勝ちますよ。
ここでローマが負けて滅亡したら、シリーズ終了してしまいますから。
ハンニバルが活躍するのは、文庫本4巻~5巻。
もうね、とにかくカッコいいんですよ。このハンニバルという男。
頭が良くて冷徹な孤高の名将。
誰もが不可能と思うようなことをやってのけますが、本人にとっては無謀な挑戦などではなく、すべて計算の上。
ハンニバル率いるカルタゴ軍は、冬のアルプス山脈を越えてイタリア半島に乗り込み、迎え撃つローマ軍を次々に撃破していきます。
天才ハンニバルの策に見事にはまり、なす術もなく討ち取られていくローマ軍。
大国であるローマに甚大な損害を与えても決して慢心することなく、前だけを見据えて進み続けるハンニバル。
カルタゴの命運を一身に背負っているからであり、己のプライドのためのようでもあり。
戦争史上に名高い「カンネーの会戦」のシーンは圧巻です。
そして、もう一人の重要な登場人物がローマの若き将軍スキピオ。
どんな状況でも孤高を崩さないハンニバルとは対照的に、明るいキャラクターとして描かれています。
彼もまた、ハンニバルに勝るとも劣らない知将。
「ザマの会戦」でハンニバルを破ります。
そう、負けるんですよね。希代の名将ハンニバルは。
史実なので、ネタバレではないということで書いてしまいますけれども。
ローマを絶望の淵まで追い詰めるも、打ち破ることはできなかったのです。
故郷から遠く離れた地で、補給も決して十分ではなく、一枚岩ではない大軍を維持しなければならない。
敗れれば、カルタゴは地中海の覇権をローマに奪われてしまう。
そんな重圧の中で、ハンニバルは誰とも馴れ合うことなく戦い続ける。
そして最後は才気溢れる若者の前に屈する。
いやー、切ない。
第二次ポエニ戦争終結後のハンニバルとスキピオ、それぞれの運命。
第三次ポエニ戦争でついに滅亡のときを迎えるカルタゴ。
ハンニバルを粘り強く追い続けたローマの将軍や、カルタゴ軍の兵士たちがハンニバルをどう見ていたのかなどのエピソードも必見です。
日本史でいうと私は新撰組が好きなんですが(笑)、少し通じるものがあるかなと思います。
カンネーの会戦が池田屋事件ですね。彼らが歴史の中で燦然と輝く瞬間。
主君のため、そして己の夢のために戦うも、最後は儚く散っていく。
ハンニバルの生き様は、日本人の心の琴線に触れるところがあるのではないかなと思います。
ちなみに私はONE PIECEファンでもあるのですが、「ハンニャバル」というキャラクターが登場したときは尾田栄一郎氏を殴りに行きたくなりました(笑)
さて、このシリーズについてもう少しだけ。
この「ローマ人の物語」の魅力は、何といってもドラマチックな文体です。
もちろん歴史上の出来事とその影響などを書くことをメインとした本で、決して歴史小説ではありません。
しかしながら、登場人物の人となりや各場面の展開が鮮やかに描かれ、まるで映画を見ているかのように心を揺さぶられます。
そう、「ローマの歴史」ではなく、ローマ人の物語。
古代ローマとは、そして私たちが生きている世界とは、遥か昔の人々が命を燃やして紡いできたものなんだなぁと、思いを馳せずにはいられません。
「ローマ人の物語」シリーズのサブタイトル一覧です。
途中から読んでも問題なく楽しめますので、面白そうだと思うタイトルがあればぜひ手に取ってみてください。
やはり最大の盛り上がりはユリウス・カエサル編ですかね。
(1)ローマは一日にしてならず
(2)ハンニバル戦記
(3)勝者の混迷
(4)ユリウス・カエサル ルビコン以前
(5)ユリウス・カエサル ルビコン以後
(6)パクス・ロマーナ
(7)悪名高き皇帝たち
(8)危機と克服
(9)賢帝の世紀
(10)すべての道はローマに通ず
(11)終わりの始まり
(12)迷走する帝国
(13)最後の努力
(14)キリストの勝利
(15)ローマ世界の終焉
古代ローマとか興味なくて本読むのはめんどいなっていう人は、とりあえず「カンナエの戦い」のwikiでも見てみてください。
ぞくぞくすること、間違いなし。
それでは、今回はこの辺で。
お読みくださってありがとうございました。